投資詐欺の手口は巧妙で、初心者からベテラン投資家までが騙される危険性があります、という話を聞くことはありますが、実際はどんな感じなのかわからないものです。
自分だったら絶対だまされないのに…などと思う方もいるとは思いますが、実際の詐欺は想像よりずっと巧妙に設計されているものです。
私が10年ほど前に参加した投資勉強会のひとつは詐欺でした。幸いだまされることなありませんでしたが、そのときにだまされずに済んだ理由、おかしいなと思ったきっかけなどについて、お伝えしてみたいと思います。
投資詐欺セミナーの参加につながった状況
当時、最初のNISA(一般NISA)制度ができた頃で、私は専業主婦でしたが、主婦として家事と育児だけだと世の中に取り残されてしまうという焦りを感じていました。
自分のペースで、できる範囲で勉強していけるきっかけをつくる場が欲しいと考えて、とあるネットコミュニティーに参加していました。参加している方たちは、おそらく平均40歳くらいだったんじゃないかと思いますが、家事などを含む作業の効率化や、金融や投資のリテラシーを高めることに興味のある方が多かったと思います。
そればかりではなく、自分からも発信できるシステムになっていたので、例えば、自分が勉強したいことを伝えて「どなたか教えてください!」とか「最近こういうことを勉強しているから一緒にやりましょう!」とか、そういうやりとりが多かったです。
「勉強したてだけど、今わかっているノウハウを提供するので、ひとり500円の参加費をください。集まった資金でまた勉強して、新たな知識をみなさんに提供していけるようにします」というような方もいました。
参加すれば、本を読むよりも勉強になりますし、質問もできますので、参加者にとっても得るものがあって、良いシステムだったなと思います。
そのコミュニティ自体には問題なかったのですが、投資詐欺につながっていったのは、初心者向けの投資セミナーでした。
投資初心者向けのセミナーだからこそあぶない!
NISAという制度ができた頃なので、興味はあったのですが、当時は個別株を少し持っている程度で投資信託を購入したこともなく、ドルコスト平均法は知ってるけど、投資信託の選び方とか実際の買い方はよくわからないというくらいのレベルでした。
そんな中、参加費500円のNISA勉強会に参加して、基本的なことやSBI証券での投資信託購入の設定方法などを教えてもらって、それをきっかけにインデックス投資を開始しました。このセミナーは真面目で善良なものでした。
(コロナの時期は大きなマイナスになりましたが、淡々と積み立てたことで、あとには大きくプラスになりました。)
その流れで、別の方から、初心者向けの無料の投資勉強会を紹介されました。内容は二部制で、ひとつめは「blogの始め方と運営について」で、ふたつめは「海外投資勉強会」でした。
表参道にある、おしゃれできれいなレンタルオフィスの部屋で、私以外にも10人くらい参加者がいました。私がそのときに興味があったのは前半の「blogの始め方」のほうでした。
(のちに、その日に会った方と月1万円の契約でblogの始め方〜構築等を教えてもらうことになり、半年で6万円支払って、1年ほどで払った勉強代は回収して、その後blogはやっていませんでした。)
問題は後半の「海外投資勉強会」でした。
金融商品詐欺のためのセミナー 実際の様子
もともとこの日のイベントを紹介してくれた、とても感じの良い男性(慶應卒だそう。本人談)がずっと場を仕切っていました。後半の説明の時間になると、何人か追加の参加者が現れました。年齢高めのご夫婦や、若い方たちもいました。
紹介者がざっくり投資の考え方などを説明してくれて、それが終わる頃に、アタッシュケース(!)を持って、高そうなスーツを着た、細身で少し神経質そうな男性が入ってきて、その方が海外投資の営業担当だと紹介されました。
靴もスーツも高そうでとてもきちんとしているのに、指にシルバーのごつい指輪をしていて、それが妙に気になりました。
流れるような話術で、とても利率の良い投資があるのだという説明がされました。上海にある投資の会社がベースになっていて、それを日本で仲介しているとのこと…。
投資商品の内容はというと、月に10万円から始める投資商品で、要するに個人年金のような仕組みだという説明がされました。なので、毎月10万円ずつ積み立てて、ドルコスト平均法で増やしてき、かなり高い年率リターン(確か10%以上という話だった記憶)があるが、引き出せるのは60歳以上とのことでした。
私が「国外であることが不安なのと、正直詐欺なども心配なのですが…」と聞いてみたところ、「ありがとうございます、そういうご質問はとても多いです」とのこと。ただ、上海は日本と違って、投資詐欺などに対する取り締まりがとても厳しく、詐欺をした場合は死刑になるような文化なので、本当に安心ですという説明でした。
※私は、質問したときは、ほぼ確実に詐欺だなと思っていましたが、場の空気がおかしい気がして、ふつうの態度で話を聞いていました。
「計算上、月10万円で続けたら、もう人生はアガリなんですよ。他に貯蓄がなくても将来的に困ることはまったくない」とのこと。
引き出しはできないがWebサイトから資産が増える状況はいつでも確認可能で、実際のWebサイトの管理画面も見せてもらいましたが、きれにつくられていました。(私はもともとデザインやWeb制作の経験値があるので、ざっと見た目を確認した感じだと、それらしくきれいにできていました。)
後ろのほうに座っていたご夫婦はすでに同じ金融商品を購入しているそうで、笑顔が素敵できれいな奥様が、「本当に良いものを紹介してくれて、おかげで今後安心です。ありがとう〜!」と、営業担当の方にうれしそうにお礼を言っていたのを覚えています。
詐欺セミナーの帰り道とその後
セミナーが終わって、その日には特に契約などをすることはなく、blogの先生と海外投資先生の名刺をもらって帰りました。帰る方向が同じ女の子がいたので、電車の途中駅までは一緒でした。
途中でその女の子から「どう思います?今日のセミナー」と聞かれたので、「前半のblogには興味があるが、後半のほうは、60歳まで引き出しができないところが怖いですね」と答えました。
彼女は「私迷ってるんですよねー、月に5万からでもやってみようかと思ってるんです」と言っていて、なんだか不自然な感じがしたものの、個人の自由なので「そうなんですねー」と答えて、その後はあまり会話もなく別れました。
真相はわからないものの、私の中では詐欺の可能性が高いと思っていたのですが、イベントを紹介してくれた方(自称慶応卒のw)からはその後もメールをもらうことがあったりして、差し障りないやりとりは数回しました。
その数ヶ月後、イベントを紹介してくれた方から「BCCでみなさんに一斉のご連絡ですみません」というようなメールが来ました。
参加していたコミュニティから、詐欺疑いで強制脱退させられたが、自分は決して詐欺などしていないのでどうか信じてくれ、という内容でした。
「あ、やっぱり詐欺だったんだ」というのが私の感想です。
投資詐欺セミナーだと思ったポイント だまされないコツ
このときの出来事で、詐欺だということにちゃんと気づけてよかったなというのと、あんなにしっかりと場をセッティングして詐欺が行われるんだなというので、ある意味貴重な経験をしたなと思いました。
これはちょっと詐欺だな。もしも本当にすごく良いお話だとしてもお金を出すことができないなと思ったポイントは下記です。
- 年率10%以上が約束された投資というのは信用ならないと思った。
- 60歳になるまで引き出しができないので詐欺だった場合の時間の猶予がある。
- イベントを紹介してくれた男性が良いひとそうなのに、なぜかちょっとした説明がわかりづらく、頭の良いひとの説明とは思えなかった。
- 聞いてもいないのに「あ、ぼく慶應なんですけどね」と学歴を言ってきた。w
以上の理由により、私はこれには怖くてお金は出せないなと判断しました。
そして、男性からの連絡が、友人知人へのメールなのに一斉送信というのもおかしいですよね。
その後、何度か、関西方面の不動産業者から「すごく良い投資物件があるんです!」というお電話をいただいて、タイミング的に、このセミナーのときに連絡先を書かされたからだな…と思いました。
お電話については、「うちにはこんな事情やあんな事情があって、経済的に苦しいのにどうしてこんなお話が私のところに来るのかわからないんです」と、とても具体的なでたらめを困った様子で言ったところ、ターゲットリストから外してもらえたようで電話は来なくなりました。
まとめ
この出来事は、今では笑い話ですが、思い返すと、対応を少し間違っていたら怖い目にあったのではないかと思います。
その場にたくさんのひとがいましたが、前半と後半で参加者ががいぶ入れ替わっていたのと、よくよく考えてみると、笑顔が素敵な奥様と旦那様のご夫婦など、後ろのほうにいたひとたちが演者(さくら)だったのだなと思いました。(そう考えると急にへんなタイミングでお礼を言い始めたなと。)
また、数年後にふと思い出して、ハッとしたことがありました。
帰り道で一緒になった女の子も演者(さくら)のひとりだったのだと、やっと思い至ったからです。ずっと何かがひっかかるなと思っていたのですが、それがやっとわかりました。
説明の中では「月に10万円の投資」と言われていたのに、彼女が「5万円から始めてみようかと…」と言ってたのが妙にひっかかっていました。
私がセミナーで質問を投げたのは、前のほうの席にいて、何もわからないふりをして質問をしておこうと思ったからなので、他の方の質問も、それに対する説明もしっかり聞こえる位置でした。そして彼女とは一緒にその場をあとにしたので、知っている情報に差異はないはずなのです。
それなのに彼女は、あるはずのない設定の「月に5万円」と言っていて、当時は「そんな話出たかな…」という程度だったのですが、その後は世間話をするでもなく帰っていった態度が少し変な気がして、ずっとひっかかっていたのでした。
金融商品詐欺に引っかからないために
良すぎる金利にほぼ詐欺だと確信していたものの、どうしても心の端で「でも本当かも…」と思う自分もいました。場の空気もあって心が揺れるんですよね。
まず、その場で契約をしないことが大切だと思います。すごく良い話だと思っても、いったん持ち帰って、落ち着いて判断することがだまされないコツです。
10年前のことなので、今ならもっと巧妙な手口になっていると思います。年率が良すぎる投資の話は信じないほうが良いですし、自分で証券口座を開いて、自分で投資信託や株を購入すれば、誰にもだまされることはありません。
どのみち資産が増えるには時間がかかりますので、良い話に飛び付かず、地道に長期投資をしていきたいと思います。